非上場会社におけるスクイーズアウト(少数株主の締め出し)の手続と留意点

非上場会社においては、経営陣(支配株主)と対立する少数株主がいることで会社運営に支障が生じることがあります。

このような場合、まずは、少数株主との間で任意の交渉により株式を買い取ることができないかを検討することになりますが、少数株主との間で感情的な対立があったり、買取価格について協議がまとまらない場合には、会社側が強制的に少数株主の株式を買い取ってしまうことができないか、という問題が生じます。

本記事では、非上場会社において、少数株主から強制的に株式を買い取るための手続や留意点について解説します。

Ⅰ スクイーズアウトとは?

スクイーズアウト(squeeze out)とは、株式会社の支配株主が少数株主の保有する株式の全部を強制的に(少数株主の承諾を得ることなく)、金銭等を対価として取得する手続をいいます。

なお、スクイーズアウトのうち、少数株主に対して、金銭を対価として交付する場合をキャッシュアウト(cash out)ということもあります。

(キャッシュアウト以外にも、別会社(買収会社)の株式を対価として交付する場合もありますが、本記事では、金銭を対価として交付する場合(キャッシュアウト)についてのみ扱います。)

 

スクイーズアウトは、典型的には、上場会社(公開会社)を買収して完全子会社化するための利用が想定されていましたが、実務上は、非上場会社(非公開会社)における内紛等を契機として、経営陣(支配株主)が対立する少数株主を会社から追い出すための手段としても用いられています。

 

Ⅱ スクイーズアウトの手法

取得対価を現金とするスクイーズアウトの手法としては、主に以下の3つがあります。

① 特別支配株主の株式等売渡請求
② 株式の併合
③ 全部取得条項付種類株式

 

なお、平成26年の会社法改正前は、②株式の併合について、反対株主の株式買取請求が認められておらず、少数株主の保護が不十分であるとして、株式の併合を利用したスクイーズアウトはあまり行われておらず、③全部取得条項付種類株式を利用するのが一般的でした。

しかし、平成26年の会社法改正により、②株式の併合においても、反対株主の株式買取請求等が定められたため、現在では、③全部取得条項付種類株式よりも手続がシンプルな②株式の併合が用いられることが多くなっています。

 

Ⅲ 特別支配株主の株式等売渡請求

どのような手続か?

株式会社の総株主の議決権の90%以上を有する「特別支配株主」が、その会社の他の株主全員に対して、その保有株式全部を売り渡すよう請求できるという制度です。

会社法
第179条(株式等売渡請求)
1 株式会社の特別支配株主株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
(以下、略)

 

もともと全部取得条項付種類株式を利用する方法等が認められていましたが、議決権の90%以上を保有している株主がいるのであれば、株主総会の特別決議等を行う必要は低いため、平成26年の会社法改正で新たに創設されました。

 

手続の流れ

特別支配株主による株式等売渡請求の手続は、以下のような流れで行われます。

① 特別支配株主から対象会社に対して、対価として交付する金額(売買価格)や売渡株式の取得日等の通知(会社法第179条の3第1項)

② 対象会社による承認(会社法第179条の3第1項・3項)
 ※ 取締役会設置会社の場合には、取締役会決議が必要

③ 対象会社から特別支配株主に対する通知(会社法第179条の3第4項)

④ 対象会社から売渡株主(特別支配株主以外の株主)に対する通知・公告(会社法第179条の4第1項・2項)

⑤ 対象会社による事前開示手続(会社法第179条の5)
 ※ 非上場会社の場合、④の通知・公告の日~取得日後1年を経過する日まで

⑥ 特別支配株主による売渡株式等の取得(会社法第179条の9)

⑦ 対象会社による事後開示手続(会社法第179条の10)
 ※ 非上場会社の場合、⑥の日から1年間

 

非上場会社における検討のポイント

非上場会社において、特別支配株主の株式等売渡請求権の行使を検討する場合のポイントは以下のとおりです。

① 売渡請求をする株主が自然人である場合には、その株主単独で90%以上の議決権を保有していなければならないこと
② 原則として、売渡請求をする株主以外の株主全員から株式を買い取らなければならないこと

 

①に関しては、売渡請求をする株主が法人である場合、その完全子会社が保有している株式についても合算して、議決権の90%以上となればよいとされていますが、自然人(個人)である場合には、他の株主の議決権を合算することはできません。

そのため、例えば、会社側(例えば、経営陣とその親族等)で合計90%以上の議決権を保有していたとしても、これらの議決権は合算することができず、特定の株主が単独で90%以上の議決権を保有していなければ特別支配株主には当たらないため、この手続を利用することはできません。

 

また、②に関しては、非上場会社においてスクイーズアウトを行う場合、そのニーズは、あくまで「対立する特定の株主を追い出したい」という点にあり、それ以外の株主から株式を買い取ることまでは望んでいないことも多いと思われます。

しかし、特別支配株主の株式等売渡請求権を行使した場合には、原則として、特別支配株主以外の全ての株主が保有する株式全部を買い取らなければならないため、特定の株主の株式のみ買い取る場合と比較して、買取資金も高額になってしまうという問題点があります。

(これに対して、上場会社においてスクイーズアウトを行う場合には、完全子会社を目指していることが通常であるため、他の株主全員の株式を買い取る必要性があります。)

 

以上のとおり、特に非上場会社においては、「特別支配株主」の要件を満たす場合でも、実際にこの手続を利用することが適切であるか慎重に検討する必要があります。

 

少数株主の対抗手段

特別支配株主から売渡請求を受けた少数株主(売渡株主)は、以下のような対抗手段を採ることができます。

 

① 差止請求(会社法第179条の7)

少数株主は、特別支配株主による売渡請求に法令違反がある場合や売買価格が著しく不当な場合等で、これにより少数株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対して、株式全部の取得をやめるよう請求することができます。

なお、この差止請求は、売渡請求の効力発生日(取得日)までに行わなければならないため、仮処分によって行使されるのが通常です。

会社法
第179条の7(売渡株式等の取得をやめることの請求)
1 次に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。
 一 株式売渡請求が法令に違反する場合
 二 対象会社が第百七十九条の四第一項第一号(売渡株主に対する通知に係る部分に限る。)又は第百七十九条の五の規定に違反した場合
 三 第百七十九条の二第一項第二号又は第三号に掲げる事項が対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合
(以下、略)

 

② 売買価格決定の申立て(会社法第179条の8)

少数株主は、特別支配株主が定めた売買価格に不服があるときは、取得日の20日前から取得日の前日までの間に、裁判所に対して、売渡株式の売買価格を決定するよう申し立てることができます。

会社法
第179条の8(売買価格の決定の申立て)
1 株式等売渡請求があった場合には、売渡株主等は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる。
2 特別支配株主は、裁判所の決定した売買価格に対する取得日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
3 特別支配株主は、売渡株式等の売買価格の決定があるまでは、売渡株主等に対し、当該特別支配株主が公正な売買価格と認める額を支払うことができる。

 

③ 無効の訴え(会社法第846条の2)

非公開会社の場合、売渡請求を受けた少数株主は、取得日から1年以内に、株式全部の取得が無効であることを確認する訴訟を提起することができます。

会社法(売渡株式等の取得の無効の訴え)
第846条の2
1 株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日(第百七十九条の二第一項第五号に規定する取得日をいう。以下この条において同じ。)から六箇月以内(対象会社が公開会社でない場合にあっては、当該取得日から一年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる。
(以下、略)

 

どのような場合に特別支配株主による株式の取得が無効になるかという点について、会社法上、明文規定はありませんが、売渡請求の手続に瑕疵がある場合や特別支配株主の議決権割合を満たしていない場合のほか、売買価格が著しく不当な場合等も無効原因になると解されています。

なお、非公開会社において、特定の株主の締め出しを目的とすることが無効原因となるかという点については、後述のとおり争いがあります。

 

Ⅳ 株式の併合

どのような手続か?

株式の併合とは、例えば、100株を1株とするように、複数の株式をより少数の株式に統合する手続をいいます(会社法第180条)。

例えば、10株を保有する少数株主がいる場合に、20株につき1株の併合割合で株式の併合を行うことにより、この少数株主の保有株式数は0.5株(1株に満たない端数株式)となります。

会社法上、1株に満たない端数株式については、その合計数に相当する数の株式を、裁判所の許可を得て、第三者に売却するか会社が買い取ることができるため、この手続を経ることで、少数株主をスクイーズアウトすることが可能となります。

なお、株式の併合を行うためには、株主総会において特別決議が必要となるため、少なくとも2/3以上の議決権数を確保できていることが必要となります。

 

手続の流れ

株式の併合によりスクイーズアウトを行う場合の手続は、以下のような流れとなります。

① 株主総会の特別決議により、併合割合・株式併合の効力発生日等を定める(会社法第180条2項、309条2項4号)

② 効力発生日の2週間前までに、対象会社から株主に対する通知・公告(会社法第181条)

③ 対象会社による事前開示手続(会社法第182条の2)
 ※ ①の2週間前または②のいずれか早い日~効力発生後6か月を経過する日まで

④ 効力発生日

⑤ 対象会社による事後開示手続(会社法第182条の6)
 ※ ④の後、遅滞なく~効力発生後6か月を経過する日まで

⑥ 裁判所に対する端数株式売却許可の申立て(会社法第235条、234条2項)

⑦ ⑥の許可に基づき、対象会社又は第三者が端数株式の買取り

 

非上場会社における検討のポイント

非上場会社において、株式の併合によるスクイーズアウトを検討する場合のポイントは以下のとおりです。

① 併合後の全株主の保有株式における端数部分の合計数が1以上となるような併合割合を設定しなければならないこと
② 対象会社が端数株式を買い取る場合には、自己株式の取得財源規制がかかること

 

①に関して、例えば、以下のような株主構成の場合に、500株を1株の割合で株式の併合をしてしまったと仮定します。

 併合前の株式数併合後の株式数
株主A5001
株主B2000.4
株主C1000.2
株主D500.1

この場合、A以外のB、C、Dの保有株式は全て端数となりますが、これらの端数株式を合計しても1株未満となってしまいます(0.4+0.2+0.1=0.7)。

しかし、会社法第235条1項は、株式の併合によって生じた端数の合計数を買い取ることができると定めているところ、この「端数の合計数」の計算上、「合計数に一に満たない端数が生じる場合」はこれを切り捨てることとされています。

そのため、端数の合計数が1株に満たない場合には、少数株主が保有する端数株式を買い取ることができなくなってしまうという問題が生じます。

したがって、株式の併合によるスクイーズアウトを行う場合には、併合後の端数の合計数が1以上となるような割合を設定する必要があります。

会社法
第235条(一に満たない端数の処理)
1 株式会社が株式の分割又は株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない。
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の場合について準用する。

 

なお、上場会社におけるスクイーズアウトの場合には、対象会社の完全子会社化を目的として行われるのが通常であるため、買収者以外の株主全員が1株未満の端数株式しか保有しないような併合割合を設定する必要があります。

これに対して、非上場会社におけるスクイーズアウトの場合、最終的な目的は、経営陣と対立する特定の株主から株式を取得できればよいため、その他の株主については、株式併合後の保有株式数が1株以上となっていても、手続上は問題ありません(ただし、併合割合から、特定の株主だけを会社から締め出す目的で行われたことが推認される結果、後記のとおり、株主総会決議の取消事由等に当たるとして、その効力を争われる可能性はあります。)。

 

②に関して、株式の併合によって生じた端数株式については、会社法上、競売によって売却するのが原則とされていますが、非上場会社の場合には、裁判所の許可を得た上で、対象会社が自ら買い取るか、第三者に売却することができるとされています(会社法第235条2項、第234条2項・4項)。

そのため、実務上は、対象会社による買取りか、第三者への売却により端数株式を処理するのが通常です。

会社法
第234条(一に満たない端数の処理)
1(略)
2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については、同項中「競売により」とあるのは、「売却により」とする。
4 株式会社は、第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
 一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
 二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額
5 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
 
第235条
1 株式会社が株式の分割又は株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない。
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の場合について準用する

 

ただし、対象会社が端数株式を買い取る場合には、剰余金の配当等と同様、分配可能額の範囲内でしか行うことができない、という取得財源規制が適用されます(会社法第461条1項7号)。

そのため、株式の併合によるスクイーズアウトを行う場合には、事前に分配可能額の範囲内で対象会社が買い取ることができるか検討した上で、万が一、分配可能額を超えてしまう場合には、第三者への売却可能性についても検討しておく必要があります。

会社法
第461条(配当等の制限)
1 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない
(略)
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
(以下、略)
 

少数株主の対抗手段

株式の併合により1株未満の端数が生じる株主は、以下のような対抗手段を採ることができます。

① 差止請求(会社法第182条の3)

1株未満の端数が生じる株主は、株式の併合に法令・定款違反があり、これにより少数株主が不利益を受けるおそれがあるときは、対象会社に対して、株式の併合をやめるよう請求することができます。

なお、この差止請求は、株式併合の効力発生日までに行わなければならないため、仮処分によって行使されるのが通常です。

会社法
第182条の3(株式の併合をやめることの請求)
 株式の併合が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、当該株式の併合をやめることを請求することができる。

 

② 反対株主の株式買取請求(会社法第182条の4)

1株未満の端数が生じる反対株主は、株式併合の効力発生日の20日前から効力発生日の前日までの間に、対象会社に対して、自己の有する株式のうち1株に満たない端数となる部分全部を公正な価格で買い取ることを請求することができます。

なお、株式買取請求権を行使できる「反対株主」とは、以下のような株主をいいます(会社法第182条の4第2項)。

(ⅰ)株式併合について決議した株主総会に先立って株式の併合に反対する旨を対象会社に通知し、かつ、当該株主総会において株式の併合に反対した株主

(ⅱ)株式併合について決議した株主総会において、議決権を行使することができない株主

そのため、株主総会において株式併合議案の議決権を有していたにもかかわらず、株主総会の前に反対の通知をしていない株主については、買取請求をすることはできません(会社が任意の買取りに応じること自体は可能ですが、価格について協議が調わない場合でも、株主は以下の価格決定の申立てをすることはできません。)。

 
会社法
第182条の4(反対株主の株式買取請求)
1 株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
 一 第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
 二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
3 株式会社が株式の併合をする場合における株主に対する通知についての第百八十一条第一項の規定の適用については、同項中「二週間」とあるのは、「二十日」とする。
4 第一項の規定による請求(以下この款において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
5 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。
6 株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
7 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。

 

また、株式買取請求がされたものの、株式併合の効力発生日から30日以内に、買取価格について会社と株主との間で協議が調わないときは、会社又は株主は、その期間満了日後30日以内に、裁判所に対して、価格決定の申立てをすることができます。

会社法
第182条の5(株式の価格の決定等)
1 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。
2 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
3 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。
4 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5 株式会社は、株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
6 株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。
7 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

 

なお、裁判所の許可を得て端数株式を会社が買い取る場合と異なり、反対株主から株式買取請求を受けて、会社が端数株式を買い取る場合には、取得財源規制(会社法第461条1項)は適用されません。

ただし、反対株主から端数株式を買い取るに当たり、分配可能額を超えてしまった場合には、業務執行者は、注意を怠らなかったことを証明しない限り、会社に対して、分配可能額を超えて株主に支払った分について、会社と連帯して支払義務を負わなければならないとされています(この支払義務は、総株主の同意があれば、免除することができると解されています。)。

会社法
第464条(買取請求に応じて株式を取得した場合の責任)
1 株式会社が第百十六条第一項又は第百八十二条の四第一項の規定による請求に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負う。ただし、その者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
2 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

 

Ⅴ 非上場会社におけるスクイーズアウトと「締め出し目的」

なお、そもそも非上場会社において、特定の株主だけを会社から締め出すという目的でスクイーズアウトを行うことが認められるのか、という問題があります。

詳しくはこちら→ 非上場会社において特定の株主だけをスクイーズアウトすることの可否と実務対応

 

Ⅵ まとめ

以上のとおり、少数株主を会社から排除する手段としてスクイーズアウトを利用する場合には、株主構成や会社の財務状況等、様々な事情を考慮した上で適切なスキームを構築する必要があります。

また、種類株式を発行している場合には、種類株主総会の開催が必要となるだけでなく、種類株式に関する定款の定めや株主間契約の内容を確認した上で、各種類株主との調整も必要となります。

当事務所では、株主構成や種類株式発行の有無等、会社が置かれた状況に応じて、スクイーズアウトを適切に行うためのサポートを提供しておりますので、少数株主対策を検討している場合にはお気軽にご相談ください。

Follow me!